春夏冬凛役 詩倉綿かほり




このコラムは最終巻ネタバレを含みます


<はじめに>


皆様初めまして、こんにちは。
詩倉綿かほりという者です。詩倉綿と書いてしくらめんと読みます。
パープルソフトウェア様初の試みであるロープライス連作という形で展開された本作ですが、メーカー様が新たな挑戦をされるタイミングでこうして素晴らしいお役を頂けた事を大変光栄に思っています。本当にありがとうございます。
遡る事数年前。秋葉原に立ち寄った際に偶然見かけたパープル様の『アオイトリ』の広告看板。グッと惹きつけられるものがあり、ずっと忘れられなくて。
いつかこのメーカー様とご縁があったらどんなに幸せだろうか……と密かに思っていた事もあり、今回お声掛け頂けて非常にありがたかったです……!


<本作の参加について>


いざ設定資料や台本に目を通すと、驚愕、驚愕……とにかく驚愕の連続でした。ここまで攻めるか。ここまでやるか。こんな美少女ゲームがあっていいのでしょうか(賞賛の意です)。
思わず唖然としてしまうような衝撃の展開もありましたが、私としてはむしろ大変挑み甲斐のある台本に武者震いがする思いでした。
収録の初めに行ったキャラクター合わせの作業の際に「洋画の吹替のような雰囲気が欲しい」という指示を頂いたのですが、恐らく求められているのは「生っぽさ」なのだと、すんなりと受け入れることが出来ました。
登場する刺激的なキャラクターやワード、現実世界に存在しない要素を、デフォルメタッチではなく生々しく表現する事が求められるであろう事は、自宅で台本をチェックしている際に薄ら予測していた事もあり……私の読みは正しかったようで、一安心したのを覚えています。
かずきふみ先生の目指す世界観・テイストを汲み取りつつ、さめまんま先生によるキャラクターの肌の質感や温度、湿度までも伝わってくるような素晴らしいスチルイラストに寄り添える……そんな芝居を目指したつもりです。


<ヒロインについて>


4作目最終章にして遂に凛がヒロインになりました。「やっと順番が回ってきた!かますぞ!やったるぞ!」とめちゃくちゃ気合が入りましたが(笑)、3rdがああいったショッキングな展開だった事もあり……
「いやちょっと待てよ、これ……凛はここから一体どうやってヒロインに……?」と、台本を頂くまでは疑問と一抹の不安を胸に抱きながら過ごしていました。プレイされている皆様もきっと同じ気持ちだったのではないでしょうか……?
あれこれコメントし過ぎてしまうと全てネタバレになってしまうので(最終巻なのである程度のネタバレOKとおっしゃって頂いてはいるのですが……)、収録を終えた今、私の口から何を語るべきなのか。とても、とても悩んでいます。
「彼女を“ヒロイン”という言葉で表現してしまって良いものなのか」……というのが正直な感想です。
1st、2nd、3rdを通して凛を演じさせて頂き、彼女を取り巻く周囲の人々や置かれている環境を把握していくうちに、特定の登場キャラクターに大きく心を動かされたり、時には心を殺されたりしてきました。
それも私自身が春夏冬凛というキャラクターに寄り添い、彼女を理解すべくどっぷり役に入り込んでいたからなのだろうと、今になっては思います。
学生が学生らしからぬ世界に飛び込んでいくお話なので、凛のお芝居のバランス感は悩みつつも最終的にいい塩梅でキャラクターに落とし込めたのでは……と思っているのですが、ジャッジは最後までプレイして下さった皆様にお任せしたい所です。
あえて芝居をこねくり回すような事はせずナチュラルに、基本的にはリアルな会話のテンポ感を大切にしながら役を作っていましたが、樹に向けて放たれる言葉に関しては……特に序盤の頃はその一つ一つに致死量の毒を含ませるつもりで台詞を発していました。
憎らしさ、歯痒さ、苛立ち、呆れ……そういうものをプレイされる皆様にまざまざと感じて頂けるように。今だから言えますが、嫌われたら勝ちだと思っていた程です。
凛って、生きる事がとても上手いようで誰よりも下手だと感じてしまうシーンが随所に散りばめられていて。そういう不器用で不恰好な所がなんとも愛おしくて、私は大好きです。
収録しながら彼女の事を大好きになったり、時には嫌いになったり……様々な感情が渦巻いてジェットコースターのように振り回されましたが、最後には「憎い」を通り越した先に抱いた「愛おしい」気持ちが勝ちました。
長くキャラクターと向き合っていると、全てが愛に変わっていくものだなぁ……
皆さんにも沢山嫌いになってほしいし、沢山好きになってほしいですね、彼女の事を。


<最後に>


気が付けば最初の収録からおよそ2年ほどの付き合いとなっていた『クリミナルボーダー』が遂に完結してしまいました。今は寂しいような、安堵したような……とても複雑な心境です。
関係者の皆様の熱い思いを覗く事が出来るこのスタッフコラムですが、私自身他キャスト様の書かれたものも含めいつも楽しく読ませて頂いておりました。
一緒に収録していなくても作品にかける思いは同じなのだと感じられて、モチベーションに繋がっていました。この場をお借りして全てのスタッフの皆様、並びに共演者の皆様に御礼申し上げます。本当にお疲れ様でした!
さて、これからプレイされる皆様。覚悟は決まりましたか?そしてプレイ済みの皆様。今はどんなお気持ちですか?
『life sentence』の収録に行く度、スタッフの皆様に「最後までプレイした方々の感想を早く見たいです」と繰り返しお伝えしていたほど、皆様の感想を目にする事が出来る日が来るのを私は本当に楽しみにしていました。
ユーザーの皆様の感想を見て自分以外の誰かの存在を感じる事で、初めて安心出来ます。ああ、私の声は皆さんにちゃんと届いたんだな……とやっと実感出来て、とても嬉しくなるのです。
発売後皆様の声を確かめる為に、私はインターネットの海へ大航海に出かける事になると思います。是非、様々なベクトルからの感想を聞かせてほしいです。
1人でも多くの方にこのゲームが届きますように。そして、忘れられない記憶になりますように。
最後になりますが、私に凛を託して頂き本当にありがとうございました!