第3回 企画・原案・シナリオ 御影



<1:はじめに>



皆様はじめまして、こんにちは、お久しぶりです。
海野あかりに見下されながら「……豚のようね」と言われたい系シナリオライターの御影です。
前々作『クロノクロック』、前作『アマツツミ』から引き続き、『アオイトリ』の企画原案とシナリオを担当しております。
いや、私はフリーなのですがね(苦笑)

そもそも企画原案というお仕事がわかりづらいかもしれないので、説明します。
具体的には 「エロ重視にしたいし舞台は女子校にしよう。洋風より、和風で夏が好みなのだがまあいいや。テーマはいつもの“幸せ”で――芸風のないやつめ。寄宿舎のお嬢様学校なら吸血鬼は必要だな。それにしても主人公が学園で唯一の男か。しかも、お嬢様たちとHしまくってるのか。むかつ――羨ましいから君には酷い目に遭ってもらう。主人公はヒロインのために地面に倒れるべきだ。なーに、大丈夫、最後はハッピーエンドにしてあげるから(詐欺の常套句)」と最初に考える人です。

シナリオはそのままのお仕事ですね。
御影のシナリオ担当は 「いわゆる共通ルート」「小夜ルート」「あかりルート+α」の担当です――『アマツツミ』より増えてるやん。
「いわゆる共通ルート」と言っているのは、共通ルートがただの日常ではなく、物語性があってプロット的には2本分の思考作業が必要だったからです。体験版1に相当する“始まりの3日間”(ダウンロードはこちら)にちょっと肉付けすれば、別のゲームが1本作れますね。
毎度ながら「こんな面倒くさい企画とシナリオ構成を考えたやつは誰だ!? 私だ!?」と、文句を言う先がありません。

と、最初にそんな小話をしつつ。
アオイトリ』総体の話は、先にディレクターの湯さんがしています。
御影は、もう少し作品そのものに踏み込んだアオイトリ』全体の話と、シナリオ担当部分のお話をします。
もちろんメアリーも理沙も美果子もかわいいです。
「わたし、メアリーママちゃん♪」かわいい。
猫には負けるが。


<2:『アオイトリ』全体のお話>



この1年の間、御影がなにをしていたかと言うと。
ずっと「どうしたら『アオイトリ』で『アマツツミ』を殺せるだろう?」を考えていました。
冗談ではなく真剣に。

結論から言うと、諦めました。
正確には、正面から倒すのは諦めました。
ま、無理なものを無理にやろうとするから、いかんのです。

前回の『アマツツミ』は自分たちの作品ながら、鉄壁です。
家族愛、病気のヒロイン、死生観、エロ、信念、成長物語、言霊、挿入歌、ド安定かつ軽いという素晴らしいプログラム――。
企画やシナリオだけで言っていれば自画自賛ですが、CGや声や音楽などなど、各業種の力と怨念が結集したゲームという媒体では鉄壁です。
どこか1部門の力だけ飛び抜けさせることが出来ても(それ自体は難しくない)、総体で勝てないという意味です。
こうなると、勢い任せに企画を立ててしまうと、結果が運任せになります。
結果とはユーザーさんが楽しいかどうかであり、作品が評価されて売れてお金がもらえるかです。
運任せは好きではありません。御影は運がいい人ですが。


具体的な問題=ポイントを2つ挙げます。
シナリオ構造と、最終ヒロインの立ち位置です。
“問題”は正しく解決できれば大きな利点になりえます。

◆A:シナリオ構造

今回のシナリオ構造は、共通ルートから各ルートへ分岐
最後のシナリオ(あかりルート)だけルートロックがかかっている――というエロゲーの王道構成となっています。



もちろん、『ネタがないからそうする』ではなく『今回のシナリオを最大威力にするにはその王道構造が必要である』というのが理由です。
その理由の片鱗っぽいものは後述します(全部説明したらただのネタバレになる)。

では、どうして普通の分岐構造になったのか? = 「アマツツミ」と同じ1本道ではないのか?
の理由を逆に説明します。

まず『アオイトリ』のシナリオの構造(シナリオの分岐構造)を考えたとき。
アマツツミ』と同じ本筋が1本通っている話にすると――少なくとも今は勝てません。
2年後の御影なら勝てるでしょうがタイムスリップは出来ません。
アマツツミ』こそ1本道が最適になるように作成した以上、『アオイトリ』が同一の最適、もしくはわずかに上回っているという程度では、ユーザー様が見慣れてしまっているので評価軸ではマイナスになります。
これは当然の話です。
よしんば上回れても(ギミック満載のミステリとか騙しあいのお話とかに逃げても)、“『アマツツミ』が好きな方を悪い意味で裏切る”のでは本末転倒です

この矛盾をどう解消するか。
ひとつの結論は、矛も盾もぶつけずに自分で持っていればよい。
解消しなければいいのです。

つまり、アマツツミ』を丸ごと食います。
アオイトリ』は『アマツツミ』の5本目、というより0本目の本筋ルートと据えました。
テーマレベルにおいても、御影のいつもの“幸せ”であればこそ、ズレも出ません(いつも同じだからな!)。
御影自身、対比構造は得意分野なので無理もしていません。
これらと以下のポイントを含めて、シナリオ構造が1本道ではないのです。


◆B:最終ヒロインの立ち位置

続いて、最終ヒロインの立ち位置です。
商売上の影響がなくなったので、ぶっちゃけると。
前作『アマツツミ』の最終ヒロインは、確かに核心として高クオリティのプロットを配したが――あそこまで強くする気はありませんでした(※結果そのものは偶然ではなく、最初から狙っていたのは前回のインタビュー参照)。
元々はCG枚数も他ヒロインと同じに考えていたのです。
ただ、各部署が高めあってあのクオリティと物量に“なってしまった”のです。

では、こう考えましょう。
“今度こそ意識的に、最終ヒロインに最大威力を集約させる”
今回は偶然ではなく、経験も元にした必然です。
御影はまったく天才ではないので、ガードの上からぶん殴ることしか出来ないのです。

アオイトリ』の最終ヒロインは、海野あかりさんですね。
手応えとしてアマツツミ』を殺せるスペックになっています(まだシナリオが未完成なので、現段階では断言しきれないですが)。
いやいや、別に最後ではなく、最初からエロかわいい
ぞくぞくします。

まとめ。
最終ヒロインを強固にするため、アオイトリ』では共通ルートと並行分岐の構造が“必要”になったのです。
体験版第一弾が公開されているなら、この意味の推測は可能だと思います。


ついでに、「それじゃあ海野あかり以外はオマケか?」と言われそうです。
そんなことはありません。
ひとまずシナリオに限れば、(なんとか全ルート『アマツツミ』の最終ヒロインを超えられないか?)と頑張りました。
この結果は――御影は共通ルートと小夜ルートまで完成させていますが、さすがに1ルートだけで『アマツツミ』の最終ヒロインのレベルは無理でした。
正直、そこまで都合よくはいきませんでしたね(苦笑)
しかし、そのくらいの怨念、もとい目標を定めていることは断言できます。
小夜ちゃんは、クールに見えてアホの子かわいい。

企画の話は以上。
正直、 「ねっとり度をあげたエロとか、克先生の絵はキスだけでも興奮するとか、陥没乳首はやっぱりやろうぜとか、私はふともも派だとか、背景の美麗さとか、最初の山場以降のメアリーのポンコツ化(かわいい)とか、あかりをベッドの上でネチネチいじめたいとか、あかり様に見下ろされながら「……豚のようね」は絶対にシナリオにいれてやるぞとか、電話の悪魔は音声収録で楽しそうですね」とか、色々と語りたいことがありますが。

まあ、だいたい語ったので個別のシナリオの話にいきましょう。
ちなみに、担当外ヒロインの話は、御影がすることは不誠実になるので避けます。ひいきだけではないのでご了承ください。



<3:個別のシナリオの話(御影担当箇所)>



■共通ルートと主人公のお話

共通ルートは、体験版の公開範囲なので簡単に。
始まりの3日間=作品全体のテーマの提示。主人公がブチ切れるまでのお話。メアリーのポンコツ化への道。家族愛は別のルートでやります。
分岐までの共通ルート=小夜の登場とH。あかりもポンコツ化。ふともも&お尻派でお姉さん好きの御影としては理沙先生ルートのシナリオ担当したかった。

以上。
体験版の公開が前提なので、ここで特筆することもありませんが。

ちなみに、『アオイトリ』では宗教的な要素が散見されます。
しかし、シナリオにおいて、宗教要素にはあまり触れません。
キリスト教では自殺はよくないとされている、くらいの感覚です。
これは『宗教知識が書けない』のではなく『日本人に馴染みのない宗教観をもつ主人公には共感できないし面白くない(ライターの知識のひけらかしになりかねん)』からです。

その主人公について少し触れましょう。
今回の主人公は“万能”ゆえに、能力の魅力が少々ぼんやりしているとは思います。
実際のところ、今回の主人公の能力は「固定」ではなく「可変」です。
とあるルートで“言霊”どころか“思うだけで実現する”までいきますが――主人公の力は、そのものが面白さのギミックというより、“最終的にその力が主人公のものではなくなる伏線要素”とだけ。

他。
シナリオを読み込む派の方で前作『アマツツミ』もプレイされた方は、主人公を含めた各キャラの設定や言動が、どう対比構造になっているのかを考えてみると面白いかも?(推奨などではなく、楽しむための一要素というだけ)

前作『アマツツミ』は共通がなかったり主人公の境遇により、ホットスタートでしたが(最初からエンジン全開の作り方)。
本作『アオイトリ』は尻上りのスロースターターです。
それを言い訳につまらないと言われてもいけないので、“体験版第1弾”になる“始まりの3日間”が別枠で1つのお話になっているというネタ晴らしでした。
それもまあ、女の子が画面にいないまま、声だけの悪魔(CV:小倉結衣さん)と10分くらい漫才してるとか十分挑戦していますけれども(苦笑)



■小夜ルートのお話

小夜ちゃん攻撃にパラメーター全振りしてて、防御が疎かで可愛い。
御影がツンデレだのクールヒロインだの描こうとしても、どうしてもポンコツ&チョロイン化する呪いがかかっているようです。

小夜シナリオの内容はエロゲーの王道展開なので、迂闊に触れづらいですが。
構造上の面白いかなという話をします(この要素のせいで、今回のルート構造が一本道型ではなく選択肢分岐型になっているとも言えます)。

小夜ルートは『アオイトリ』の“正史”になります。
“正史”というのは、それがシナリオ的に一番正しい・面白い、などの話ではありません。
悪魔が小夜というヒロインを利用して、主人公をもっともストレートに篭絡しようと頑張るお話=“正史”であるということです。
主人公の出生の秘密が語られたり、彼の奇跡の力がもっとも強く発揮されるのが小夜ルートになります。

メアリールートは“外典”
吸血鬼でありながら前向きでポンコツ、なにりも可愛い(※重要)メアリーの登場は、悪魔にとっても完全に予想外だったのです。
ちなみに外典を英語で言うとアポクリファ。かっこいい。

理沙ルートは“外伝”
本題の奇跡の力などより、学生である主人公や、赤錆姉妹の愛情などのお話。
悪魔さんも本題を忘れて遊んだりする話――の予定です。
全体で見ると異色であることを前提にしています(こういうルートの担当になるとライターは遊べて楽しい)。


■あかりルート+αのお話

あかりルートは“黙示録”
ルートロックされているお話。
奇跡の力をもつ“特別”な主人公やヒロインたち、超常の存在である悪魔までもが、全部まとめて “普通”の人間である海野あかりさんにやられていくお話です。
これがなければ普通のエロゲーでしょうが、これがあるので『アオイトリです。
家族愛、死生観、ガードの上から殴る予定の泣き要素完備。
エロは海野あかり様はなにをしていてもエロいので問題ありません。

そこまで話していいのかと思われるでしょうが。
+α部分さえ伏せていれば特に問題ありません。


<4:企画者として1つだけお断りと謝罪>



1か所だけ企画としてミスしたと判断・すでに修正された部分があります。
それを、ここで公開しておきます。
制作途中で切り替えたことなので、現状、活かせていない設定が出てきてしまっています。
これは企画者としてのミスなので、先に提示しつつ謝罪いたします。

舞台となる『女子校』部分のことです。
主人公の設定や、舞台や制服の見た目のフォローにはなってはいるのですよいのですが。

実は企画当初『エロシーンのうち5個くらい、メインヒロインとは別に1シーンのみ登場の“女子学生”との濃いシーンをやろう』という要素を考えていました。
エロ重視に、話の本筋に関係のない“多様なキャラやシチュエーション”を盛りこめればと考えたのです。キャラデザインも原画家さんの好みを反映させてと。
名残りとして、ゲーム開始直後の見知らぬ女子学生さんとのHのようなものを、もっと長くしつつ、何回かやろうとしていた、ということですね。

しかし、制作進行中『その回数やCG素材なども、全てメインヒロインに注ぎ込むべきではないか』という意見が出て――まったくもってその通りだと修正されました。
以上。
なんでもはしませんが、すみません。


<5:おわりに>



特にまとめることもありませんが。
ライターだからこそ、御影は“言葉での宣言”をそこまで重視していません。
もちろん、しない、より、するほうが有用だとは思います。
さらに必要なものは“宣言した上での行動”――結果と実物ですね。

というわけで。
今回も早期から体験版が公開されているので。
もしも未プレイの方がいましたら、『ふむ……私が自ら確かめてみようか(かっこいい。人生で一度は言ってみたい台詞9位)』と上から目線で遊んで頂けばと思います。
一緒に、主人公の立場が羨ましくて腹を立てましょう。
安心してください、後で彼には酷い目に遭ってもらいます

まあ、せっかくのゲーム=娯楽ですので、むつかしいことは抜きに楽しんで頂ければ幸いです。
これは制作者のためではなく、遊ぶ人が一番楽しくゲームできるポイントかと。

それでは、またの機会があればお話ししましょう。